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大阪高等裁判所 昭和50年(行コ)27号 判決 1977年3月29日

控訴人 高見誠規

被控訴人 近畿郵政局長

訴訟代理人 岡崎真喜次 村中理祐 ほか五名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一申立

一  控訴人

1  原判決中、控訴人に関する部分を取消す。

2  控訴人に対し、昭和四一年七月八日、被控訴人(当時の名称、大阪郵政局長)がした、三か月間俸給の月額の一〇分の一を減給する旨の懲戒処分を取消す。

3  訴訟費用は一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人<省略>

第二主張、証拠<省略>

理由

一  当裁判所の判断は、次に付加、訂正するほか原判決理由の説示するとおりであるから、ここにこれを引用する(ただし控訴人が撤回した請求原因(三)の(2)、(3)に対する判断部分を除く)。原判決一八枚目裏四行目の「このときは」以下同九行目の「そうすると」までを「右認定事実によると、このときは、控訴人はいまだ行訴法八条二項一号にいう審査請求をしていなかつたものというべきであるから、」と、同一一行目の「人事院が」を「右瑕疵は、その後人事院が」と、同末行の「瑕疵は治癒され」を「治癒し、」と、同一九枚目表一一行目の「直接」以下同末行の「この場合は」までを「処分の効力を争う場合は」と各訂正し、同裏一行目の「国公法」以下同三行目の「であれば、右」までを削除し、同四行目の「右不当労働行為」以下同五行目の「主張して」までを「右出訴期間内に」と、同六行目以下同二〇枚目表一〇行目の「解されるから、」までを「のである。しかし、行訴法一四条の出訴期間の定めは、訴の提起に関するものであつて、右期間経過後において、不当労働行為該当の瑕疵事由を、請求を理由あらしめる事実として主張することまでを制限する趣旨ではない。不当労働行為該当の瑕疵事由とそれ以外の瑕疵事由を併せて、処分取消の訴を提起している場合、各瑕疵事由は請求を理由あらしめる事実であり、これにより訴訟物を異にしない。従つて、現業国家公務員の懲戒処分につき、不当労働行為該当の瑕疵事由以外の瑕疵事由を理由に、人事院に対する審査請求を経、処分を知つた日から三か月経過後に提起した処分取消の訴において、不当労働行為該当の瑕疵事由を主張することは許される。右のように解しても、最高裁昭和四九年七月一九日判決、民集二八巻五号八九七頁に反するものではない。従つて、」と、同二一枚目<省略>裏一〇行目の「中央執行委員会」を「スト前日には、中央執行委員会」と、同一一行目の「一男と兵庫地区」を「一男が、同月二二日からスト当日までは兵庫地区」と各訂正し、同一二行目の「派遣された。」を「派遣された。姫路局においては、四月中旬以降、ストライキ宣言職場大会、決起集会を重ね、ストの態勢を固めつつあつた。」と、同二四枚目裏末行および同二五枚目一行目の「支部執行委横路喬が」を「控訴人は、支部執行委員横路喬と共に」と各訂正し、同二行目の「たが」以下「加わり、」までを削除し、同七行目の「高見は」を「高見は分会長であるとともに」と、同一〇行目の「活動をした。」を「活動をなし、他組合員に対し指導的地位にあつた。」と、<省略>同二六枚目裏九行目の「単に右」を「控訴人は単に右」と、同三一枚目表八行目の「これを目して右組合」を「右処分は、控訴人が右組合」と各訂正する。

二  よつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用につき民訴法八九条を適用のうえ、主文のとおり判決する。

(裁判官 小西勝 知田功 蒲原範明)

〔参考〕付加訂正した第一審判決理由第一、一の一部

ところで、本件処分取消の訴においては、右処分の瑕疵として被告局長の不当労働行為を理由とするものと、それ以外の事由を理由とするものとがそれぞれ主張されているが、このような場合において、被告局長のいうように、右不当労働行為に該当する瑕疵の存在につき行訴法一四条所定の出訴期間内に訴を提起してこれを主張しておかなければ該瑕疵の存在を理由とする部分の訴が不適当となるものとはたやすく考えられない。その根拠は次のとおりである。すなわち、およそ被処分者たる職員が不当労働行為に該当する瑕疵の存在を理由として処分の効力を争う場合は、他の瑕疵事由の存在を主張して処分の効力を争う場合と異なり、右審査前置の手続をふむことなく、右出訴期間内に直ちに処分の取消の訴を提起することができるものである。しかし、行訴法一四条の出訴期間の定めは、訴の提起に関するものであつて、右期間経過後において、不当労働行為該当の瑕疵事由を、請求を理由あらしめる事実として主張することまでを制限する趣旨ではない。不当労働行為該当の瑕疵事由とそれ以外の瑕疵事由を併せて、処分取消の訴を提起している場合、各瑕疵事由は請求を理由あらしめる事実であり、これにより訴訟物を異にしない。従つて、現業国家公務員の懲戒処分につき、不当労働行為該当の瑕疵事由以外の瑕疵事由を理由に、人事院に対する審査請求を経、処分を知つた日から三か月経過後に提起した処分取消の訴において、不当労働行為該当の瑕疵事由を主張することは許される。右のように解しても、最高裁昭和四九年七月一九日判決、民集二八巻五号八九七頁に反するものではない。従つて、被告局長のいうように、原告らが本件処分のなされたことを知つた昭和四一年七月八日から三か月を経過した後である昭和四二年五月一日に右処分取消の訴を提起したからといつて、右訴において不当労働行為の瑕疵の存在を主張することが許されないわけのものではない。そうすると、右主張に関する部分の訴を右出訴期間の制限を理由に不適法として却下すべきいわれはなんらないものというべきである。

以上のとおりであつて、本件処分取消の訴はいずれにせよ適法に提起されているといえるから、これを不適法とする本案前の抗弁は理由がない。

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